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最高裁判所第一小法廷 昭和57年(し)101号 決定 1982年8月27日

右の者に対する電汽車往来危険、威力業務妨害被疑事件について、昭和五七年八月六日広島地方裁判所がした逮捕状及びそれに基づく処分に対する準抗告棄却決定に対し、申立人から特別抗告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、別紙「抗告申立書」<省略>記載のとおりである。

しかし、逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法四二九条一項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当であるから、本件準抗告棄却決定に対する特別抗告は、不適法である。

よつて、同法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(団藤重光 藤﨑萬里 中村治朗 谷口正孝)

〔参考・原審決定〕

(広島地裁昭和五七年八月六日刑事第二部決定)

右の者に対する電汽車往来危険、威力業務妨害被疑事件について、昭和五七年八月三日東広島簡易裁判所裁判官が発付した逮捕状及びそれに基づく処分に対し、右被疑者から準抗告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

〔主文〕

本件準抗告を棄却する。

〔理由〕

一 本件準抗告の申立の趣旨及び理由は、被疑者提出の準抗告書記載のとおりであるから、これを引用する。

二 そこで一件記録を検討するに、昭和五七年八月三日、東広島簡易裁判所裁判官が被疑者に対する電汽車往来危険及び威力業務妨害被疑事件について逮捕状を発付したこと、そして、右逮捕状に基づき、西条警察署司法警察員が、同月四日午前七時四分、被疑者を逮捕し、同日午前九時、同人を同警察署に引致したことが明らかであるところ、逮捕状の発付及び逮捕の処分は、刑事訴訟法四二九条一項各号が規定する準抗告の対象となる裁判に該当しないので、これに対して準抗告は許されないものといわなければならない。

因に、法が逮捕について準抗告による不服申立の方法を認めていない理由は、逮捕に続く勾留において逮捕前置主義を採用しており、逮捕から勾留請求手続に移るまでの時間が比較的接着していることから、勾留の手続において裁判官の司法審査を受けるうえ、この勾留の裁判に対して準抗告が許されている以上、さらにそれ以前の逮捕段階で準抗告を認める必要性に乏しいからであり、逮捕について準抗告が許されないとしても、憲法に規定する刑事手続上の人権保障の趣旨に反するものではない。

三 従つて、本件準抗告の申立は不適法であるので、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により、主文のとおり決定する。

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